イノセント(ネタバレあり)

イタリア映画の名匠と呼ばれたヴィスコンティの遺作だが、中盤まではダイジェスト感があり、ヒロインのラウラ・アントネッリのヌードを超える見せ場は無い。
それでも赤ん坊殺しのショッキングなシーンから、物語は残酷な方向に流れて行き、同じ遺作になったキューブリックの「アイズワイドシャット」と違って、主人公は妻に去られた絶望を認めざるを得なくなり、拳銃自殺を遂げ、それを見た美しい愛人は、関わり合いは御免だと逃げ去ってしまう。
キューブリックは冷徹な映画を作り続けながらも安寧な家庭を築いていたが、ヴィスコンティ悲観主義に満ちたエンディングからは、家族や恋愛の温かさが皆無で、実生活で不幸続きだったのかと推測してしまう、暗い作品だった。