カツドウ屋とビジネスマン

今年第二弾が公開される「エクスペンダブルズ」は、前作がスタローンとシュワちゃんとウィリスという超豪華な3ショット(実際は別撮り)以外に見所が無いとんだ肩透かし大作だったが、ここ数年の2大アクション俳優の歩みを思い返してみると、二人の映画への取り組み方がまるで違うのが興味深い。と言うより初めから異なっているのだが。
スタローンは青年期から映画俳優を目指して、数多くのオーディション落選と極貧生活にもめげずに脚本に手を染め、それが「ロッキー」の脚本・主演による世界的成功に結び付いた事は今でも伝説の一つとして語り継がれている。90年代以降のスタローンはロッキーとランボーというヒットシリーズが終了してマンネリズムに陥り、アクションスターとして過去の人というイメージが持たれていたが、21世紀を迎えて、ロッキーとランボーの新作を立て続けに自作自演で製作するという行為で関係者や映画ファンを唖然呆然とさせ、公開されるや予想を覆す水準の高さでスタローン健在をアピールした事は一時期映画ファンの間で話題になった。私自身はロッキーに比べてあまり思い入れの無いランボーの方に驚きがあった。B級アクションとしての完成度と、自分自身へのカメラの視点の年齢的成長ぶりは映画を一作目に次ぐ物にして、自分には映画しかないというカツドウ屋の誇りさえ感じられた。まさに継続は力なりだ。
一方のシュワちゃんに取って、映画はボディビルダーとして成功した後の自身の更なるビジネスの発展と名誉欲を満たす為の手段だった。そんな彼がアクションスターとして世界を制覇した後に興行成績に陰りが見えれば、カリフォルニアの知事になる事で更なる名誉欲を満たそうとした(移民一世は大統領になれない)。世界一の称号を欲しがる彼らしい選択である。「エクスペンダブルズ」のシュワちゃんの出演シーンは知事の仕事の合間を縫って一日だけで撮られたという。そして去り際の彼にスタローンが言い放つ「あいつの目的は大統領のイスだ」は、アクションスターとしてライバルと同時に友人でありながら、出発点が全く異なる男への皮肉でもあり激励でもある台詞だった。もしかしたら「お前はなれないが、息子なら大統領になれるかもしれないな」とも言いたかったかもしれない。