大鵬死去

戦後を最も代表する横綱の一人で、定年退職後は相撲界の長老ともいえる存在だった納谷幸喜さんが亡くなった。36歳で脳梗塞で倒れなければ理事長を務めた人だろう。この人は私が生まれる四年前に引退したので既に伝説の人物だったが、父親に今までで一番優勝(32回)した人と教えられたのを憶えている。「昭和の象徴」がまた一人逝ったという感慨を持った年配の人も多いだろう。
亡くなる寸前には自身が育った二所ノ関部屋自体が消滅してしまったというが、この人の引退後の人生の中では多くの関係者が先に逝った。自身の引退相撲の直後に一門の最高実力者になっていた玉の海が現役中に死亡、その後も最大のライバルの柏戸、現役最後の対戦相手だった初代貴ノ花琴櫻や先輩の初代若乃花など二所一門の先輩後輩、弟弟子の大麒麟も亡くなり、娘婿だった貴闘力野球賭博の発覚で角界を追われた。亡くなる数日前に分かった部屋の消滅が体調悪化に関係が無いと言えなかったと思うが、自身の家族の不幸は一度も経験しなかったのが救いかもしれない。