未完は確実

「ノンフィクションW」を観て、ロシアのアニメーション作家ユーリー・ノルシュテインが制作している「外套」が、2001年以降作業が完全にストップしてると知った時はショックだった。彼が「外套」に苦闘している事は19年前に観た「ETV特集」で知ってたが、それから3年経っても作業は殆ど進まず、2006年には画家で美術監督の妻も倒れ、ロシアの文化大臣の協力も得られず、それに憤慨したのかノルシュテインは国の公的援助を拒否、過去の作品の画集やキャラクターグッズの売り上げ、日本を含む海外での講演料などをスタジオの維持費に充ててどうにか「制作中」の体裁を保っている状態だと言う。
2つの番組で明らかになったのは、「外套」の制作にソビエトの役人も最初は反対したが、製作費を少額ながら保証してくれてた事、それが1991年のソビエト崩壊で制作中断を余儀なくされ、スタジオも閉鎖された事だった(現在のスタジオは自分で開いた物)。彼の現状を嘆く言葉にはソビエト時代への郷愁も含まれてて、儲け主義の映画界でドンキホーテ的な雰囲気さえ漂わせていた老雄の手で「外套」が完成する可能性は無くなったようだ。残された道は、続きのストーリーを妻の原画(「話の話」の狼などは彼女が描いたキャラ)で追って行き、ナレーターに原作を朗読させるしか無いと思う。