存在感の無い日本人力士

相撲中継を毎回観る習慣が無くなって20年以上が経つ。私に取っての最大のスポーツヒーローだった千代の富士の引退が直接の理由だったが、今のモンゴルやヨーロッパ勢が横綱大関の地位を独占し、日本人力士がすっかり影を薄くした今と比べると、千代の富士貴乃花の時代の力士の存在感はずっと上だった。大関陣だけ見ても北天祐や若島津、三枚目の役回りに居た朝潮貴乃花時代にも活躍した霧島などが居た。他にも大関から陥落した小錦や寺尾は横綱クラスの人気を誇っていたし、舞の海の存在感は前例の無い物だった。それに貴乃花時代のハワイ勢はヒール的な立ち位置で、若貴兄弟に立ちはだかる強敵という役回りも絶妙なバランスだったのだ。今のモンゴル勢は日本人力士の実力の低下で必然的にヒーロー的な地位を獲得しているが、その事が慢性的な観客動員の低下に繋がっていると言っても過言では無い。むしろあれだけの不祥事をしでかした朝青龍の方が優等生的な白鵬より華があったというのも皮肉な話で、マイク・タイソンが第一線を退いたボクシング業界に似ている。観客動員を今より増やす最大の呼び水は実力があって容姿にもめぐまれている日本人力士の登場だ。かつての初代貴ノ花のように大関止まりでもいいから、そういう人物の台頭が今一番待たれている。