幻の「笑の大学」初演版

三谷幸喜の代表作「笑の大学」はDVD化されているが、西村雅彦が演じる検閲官の向坂が、NHKで97年に放送された初演の時とキャラクターが違っているので驚いた。初演の時の向坂は典型的な堅物で、演劇、ましてや喜劇など観た事も無い人物という設定になっていて、彼の馴れない劇の台本の検閲に劇作家の椿が反発して、二人で妥協点を探る内に元の台本より面白くなって行く展開と構成が抜群に面白い作品だった。しかしDVD版(98年の再演の収録)の向坂は基本的性格は同じなのに始めからサディスティックな雰囲気のある人間になってて、こちらを初めて観る人はともかく、初演を観た者に取ってはどうも違和感の残る演技だった。そういう意味でNHKで正月に放送された初演版はかなり貴重な映像記録と言える。惜しいのは序盤で地震速報が流れてしまった事だ。CSでの再放送が待たれる。