日本アニメマニアにハッタリは通じない

数年前に日本でも大ヒットした「インセプション」は多重層の夢の世界で繰り広げられる知的アクション巨編といった触れ込みで公開され、ディカプリオや渡辺謙の集客力と、作品自体のハッタリに若い観客がまんまと乗せられたお陰で興行的にも成功を収めた。ハッタリに騙された事は私も何度もある。今でも好きな「セブン」の「予測の付かない」展開と陰湿な映像美にはシビれた(死語)し、「金融腐食列島・呪縛」のハイテンションな展開にも大いに勘違いしてしまった。別に「インセプション」が下らないと言ってるのでは無く、「ダ・ヴィンチ・コード」と同じで、映画や本の蓄積が足りない内はハッタリに引っ掛かるんだよなあと思った物だ(読書に関しては無知同然である)。
インセプション」に引き込まれなかった理由は他にもあり、夢を舞台にしたエンターテインメントといえば「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」という大快作があり、99年に公開された「トゥルーマン・ショー」を観た時も、面白いけど日本には「ビューティフル…」があるからなあという感想を持った事がある。
同様にナタリー・ポートマンの迫真の演技で話題になった「ブラック・スワン」も、自分を追い詰めてるのが自分自身だったという展開を巧みな編集で見せる演出で一見すごく面白く作ってあったが、これにしたって98年に公開され一部のアニメファンの間で話題になった今敏のデビュー作「パーフェクト・ブルー」で既に試みられた題材であり、「ブラック・スワン」に驚いた人は「パーフェクト…」の存在すら知らない人が殆どなのだろうと思った。日本のアニメに詳しくは無い私でさえこうなのだから、精通してる人はハリウッド映画を観て元ネタを発見する楽しみはあっても、騙される事は無いだろう。私も「アバター」はとても気に入ってるが、宮崎・押井アニメの引用がなければ成立しなかった作品だと今更ながら書いて置く。あと「トゥルーマン・ショー」も「パーフェクト・ブルー」もレンタルで観た物だ。