007 スカイフォール

近年の007映画で興行・批評の両面で成功した「スカイフォール」を観た。今回は世界的陰謀は一切絡まず「Mという老母を巡る二人の息子の攻防戦」がアクションの主軸になっている。ボンドもハビエル・バルデム扮する元スパイも一度はMに使い捨てにされ、二人とも彼女に大して激しい嫌悪感を持っているが、ボンドは祖国への忠誠心の延長線として上司のMを命懸けで守り、もう一人はMを自分の手で殺す事に異常な執着を見せる。私が気になったのはこの男の役になぜバルデムを起用したかという事だ。
コンピューターに精通し、富も人命も思いのまま操れるようになったぶん犯罪行為に飽きて、遣り残した事として最も憎み執着しているMの殺害を企てるというキャラ設定は面白い。それなら彼にも難病というハンデを与えて余命のカウントダウンを与えるべきだったと思うし、こういう重要なキャラならやはりイギリス人俳優に演じさせた方が筋が通ったと思う(尤もバルデム以上の演技力と存在感を持った俳優を探すのは困難だが)。それと彼がわざと捕まり脱出する行動は「ダークナイト」のジョーカーを連想してしまうし、島からロンドンに向かい喚問中のMを殺そうとする手間は同じなのだから、自分を英国軍ヘリに運ばせたのは旅費が勿体無かったからかいう突っ込みを入れたくなる。結論を言うと、バルデムをキャスティングしたのは大正解だけど、彼は従来のボンド映画の悪役にこそ相応しい俳優で(南米の麻薬王とか)、ボンドと「同門の兄弟弟子」には違和感が拭えなかった。それとボンドガールを最後まで生き残らせてこそ007だと思う。