敵がハッキリしてこそ009

「花は咲く アニメスターバージョン」で使われた映像を見て、「009 RE:CYBORG」を借りた。原作は「海底ピラミッド編」だけ読んだ事があり、アニメ版は80年の第2シリーズが一番強く残ってる。当然ながら今回も悪の組織と戦う009たちの活躍を期待したのだが本作に悪役は存在せず、ある時期が来ると頭の中の「神」の部分が特定の人間の心に囁くようになり、それを聞いた人間は逆らうこと無く核ミサイルまで発射するという、自分で文章を書いててもよく解らない設定だった。しかも序盤でジョーまで洗脳されたのには唖然。映画が公開される前年に同時多発テロが起きたので、一神教の国ではない日本のクリエイターとして神への忠誠がテロに悪用される事への危惧が発想の元になったんだろうと推察しているが。
最後は人間同士の争いが全世界で激化し、ラストはセカンドインパクト後の光景みたいな美しいベニスの街にサイボーグ戦士たちが集い、次の使命に備えるという終わり方だったが、009らしい見せ場は終盤まで用意されてるものの、悪の組織の野望を阻止出来ないなら009を作る意味があったのかと思えた。
シリーズ化を計画してたのなら1作目はエンタメに徹するという「パトレイバー」の路線を踏襲するべきだったし、これなら「攻殻機動隊3」を作った方が良かったとも思えるし、神山監督の押井監督への映像的引用によるリスペクトもモノマネにしか見えなかった。唯一の見所はフランソワーズとジョーのラブシーンで、白状するとブルーレイを借りたのは彼女見たさだったから。