「あまちゃん」を振り返る

思い起こせば最初にこのドラマを観る気になったのは、チーフ・プロデューサーの訓覇氏の隣で記者会見に臨んだ能年玲奈の画像を見たからだった。この時点で既に彼女には光を感じた。しかし初回から観始めたが、ヒットするとは思ってなかった。最近入手したガイドブックを読んで初めて、訓覇プロデューサーが2011年6月にクドカンに声を掛けた時から、伝説が始まっていた事が分かった。面白い脚本はスタッフもキャストも全員がやる気になる。そして反響が大きければ更にやる気に火が点き、各々が独自のアイデアを出し周りも乗って来る。そして視聴者は次回が、来週が気になって目が離せなくなる。「あまちゃん」はクドカン久慈市の伝統文化、三陸鉄道の震災時の事実、彼が少年時代から培ってきたアイドルや音楽、映画やドラマなどの膨大な知識と経験を総動員して生み出した、従来の朝ドラの枠を越えたストーリーで、その中心となる天野アキを演じた能年玲奈という逸材と、彼女を見事にサポートしたベテラン俳優勢、「舟を編む」から独自のキャラを確立し出した松田龍平に、橋本愛を始めとする有望な若手俳優、朝に聴けば必ず元気になる曲を目指して作られた大友良英の素晴らしいテーマ曲、ファンの誰もが共有したくなる「憩い」をモチーフにした魅力的なセット、そして小泉今日子などの意見を柔軟に取り入れてクドカンの世界を形にして行った演出陣と、全てのスタッフとキャストが一つの方向に向かった事で生み出した、数年に一度しか起こらない奇跡のドラマと言ってもよく、「踊る大捜査線」に匹敵すると言っても過言では無い。半年間、日曜を除けば朝の7時30分が待ち遠しかった。だから「あまちゃんロス症候群」の対処法は一つしかない。録画した人は飽きるまで観続ければいいし、録らなかった事を後悔した人は総集編や再放送の情報を逃さずチェックして、今度こそ第1話から録画すればいい。