全編観れなかった「ふくすけ」

WOWOW多部未華子の出演した舞台「ふくすけ」が放送された。これで今年に入って彼女の舞台が三本も観れた訳だが、個人的に理解できたのは「サロメ」だけで、「農業少女」と「ふくすけ」は全くと言っていいほど理解出来なかった。松尾スズキの作品で気に入っているのは10年以上前にFMシアターで放送されたラジオドラマ「祈りきれない夜の歌」で、この作品が面白い上にテーマが解り易かったのは、時間的表現的制約があったからだと思う。舞台は殆どのタブーが無くなるし、劇作家や出演者のファンが入場料を払って観に来るので、制約が無い分「いちげんさん」には訳の解らない代物に見えてしまう。松尾のタブーに挑戦した「ふくすけ」のような舞台は、「三丁目の夕日」や山田洋次が手掛ける事が多い家族映画と同じくらい、私に取っては興味の対象外だ。同じように湊かなえ伊坂幸太郎の作品にも魅力を感じない。暴力を題材にするなら、たけしやスコセッシのように殺す側にも殺される側にも感情移入出来ない作品がいいし、タブーの扱い方なら、森崎東今村昌平若松孝二の作品の方が伝え方としては支持出来る物がある。