大洗史上最大の作戦⑤
坂本美緒は西住みほが所属する学園艦を擁する大洗町のマリンタワーに注目。みほに作戦の決行を大洗町で行う事を提案する。みほから連絡を受けたしほの呼び掛けで、聖グロリアーナ高のダージリン、プラウダ高校のカチューシャ、知波単学園の西絹代、アンツィオ高校のアンチョビ、サンダース高校のケイ、黒森峰学園の西住まほが自分たちの戦車で大洗町に集結。みほの提案で、各校一両の隊長車を、最も優秀な操縦士、砲手、装填手で駆使する事になった。（継続高校は作戦に適した戦車が無いので不参加）みほが驚いたのは島田愛里寿の隊長車も加わった事で、愛里寿は「ボコは何度やられても立ち上がる。私は2度負けただけよ」と答え、更に秋山優花里が「センチュリオンの修理、よく間に合いましたね」と聞くと、愛里寿は「貯めていたお小遣いを全部使った」と答えた。作戦準備の為の整備中、特別支給された実弾を手にした優花里が「これを使うのは最初で最後にしたいですね」とみほに言うと、彼女も頷いた。
そしてこの集結に呼応するかのように、ゴジラが大洗港に接近中という情報が伝わった。坂本は自分の経験から、ゴジラは自分に進化を促す程の攻撃をして来た人間側の武器を本能的に破壊する行動パターンがある。この世界では戦車を脅威とみなし、破壊の為に戦車が集結する港に上陸して来ると踏んで、完全な決着を付ける為に大洗町を選んだのだ。
各校の隊長との作戦会議を終えて学園の倉庫に立ち寄ったみほを待っていたのは、あんこうだけで無く大洗全戦車道チームだった。角谷杏は「水臭いよ西住ちゃん。今度の作戦は隊長車がおとりも兼任するそうだけど、アイツがどう動くかなんて当日になんないと解んないでしょ。だからおとりはあたし達にまかせて」。みほたちあんこうチームは、ただ頭を下げるだけだった。
夜の大洗の港に立って海を見つめるみほの隣に宮藤芳佳が立ち、「明日ですね」と呟く。みほは「皆さんと違って、私たちは実戦は初めてなんで、こんな怖い気持ちになったのは初めてです…」と語った。芳佳は「作戦は私たちウィッチと、艦娘の皆さんが全力でフォローします！」と答えた。
作戦決行の朝、みほ達が宿舎代わりにしてる五十鈴華の実家の前にストライカーユニットで降り立ったのは、武部沙織とよく似たペリーヌ・クロステルマンだった。彼女はみほ達との会合の時から大洗の制服に憧れてて、沙織と作戦終了後に制服の交換を申し出て、沙織も快諾した。
ゴジラは遂に大洗港に上陸した。港にはあんこうチーム以外の大洗学園の戦車が待機していたが、その異様で巨大な姿に、角谷は「近くで見ると本当に化け物だね」と汗を見せ、リーダーの澤梓と、珍しく目標を見ようとして「紗希、顔を出しちゃダメ！」と注意される丸山紗希以外のウサギさんチームは逃げ出したい程の恐怖を感じ、カバさんチームのカエサルとエルヴィンは「今見ている物が全く信じられない」「歴史を超えた神話の怪物のようだ」と驚いた。だがゴジラが咆哮すると、全員が戦車の中に入り、静かに後退を始め、ゴジラは導かれるように前進。近付き過ぎたら熱戦で撃破されるので一定の距離を保ち、絶対に先に撃たないようにという坂本のアドバイスを元にした移動で、大洗マリンタワーの真下に立たせるのが作戦の第一目標だった。
しかし途中でゴジラを写真に収めたい少年の一団が、遠くからの撮影では飽き足らず、自転車でどんどん近付いて来た。それに気付いたアヒルさんチームやカバさんチームの乗員が離れるように説得したが、少年たちは戦車も撮れるぞと増々近付いた。アヒルさんチームの戦車は業を煮やして後退をストップして、少年たちを近付けまいとして歩道を塞ごうと前進してしまった。ゴジラは即座に反応して熱戦を放射。道路を直撃した爆風で、アヒル、カバ、ウサギ、カメ（戦車が路上に叩き付けられる時に、杏の「やられたー！」が聞こえた）、レオポン、アリクイと、大洗女子学園の全ての戦車が横転し、作戦続行不能になった。
マリンタワーの付近で待機していたあんこうチームは、遠くで仲間が戦車ごと蹴散らされる光景の一部始終を見て慄然とし（杏は無線でみほに「皆やられちゃったけど無事だよ。河嶋はのびてるけど」と報告した）、他の隊長たちも強いショックを受ける。しかし黒森峰の学園艦でテレビ中継を観ていた逸見エリカは聞こえる筈の無いみほに「作戦続行よ！」と檄を飛ばした。みほはすぐに「皆さん、予定通り一緒におとりになってください！」と頼んだ。ダージリン達もすぐに呼応して前進を始め、ゴジラに近付く。そして一定の距離の地点で止まり、みほは「来い、化け物！」と、彼女らしくない台詞を呟いた。ゴジラはすぐに反応し再び前進を始め、隊長車たちはタワーに誘う為に、距離を保ちながら後退を始めた。
まほは気丈に振る舞う妹の姿に「強いなみほは。みほだけじゃなく、島田隊長は眉一つ動かして無い。私も使命を全うする。みほと、戦車道と、この町を守る事で」と決意を新たにした。
