巨星墜つ

ウィキやアニメに詳しい人のブログを読むだけでも、高畑勲監督が日本アニメ界に遺した功績は計り知れない物を感じるが、私が印象に残ってるのは、一時期レンタルDVDで昔の東映長編アニメ(当時は動画とかまんが映画と呼ばれてた)を観た時に、日本の長編アニメは「ホルス」と「ヤマト」が変えたのかなあという感慨だった。

「ホルス」以前の東映動画社は「東洋のディズニー」を目標にしてたので、「白蛇伝」「西遊記」「わんぱく王子の大蛇退治」「わんわん忠臣蔵」など、中国や日本の古典をディズニー式のエンターテインメントで作り上げた作品が多く、どれも面白かったが、高畑監督が長編アニメデビューを飾った「ホルス」は「ナウシカ」の原型とも言える、冒険活劇の枠に収まらない作品で、この作品で重要なスタッフに抜擢された宮崎駿の「(興行的に大失敗しても)高畑さんは間違ってない」という思いは、のちにテレビアニメの金字塔と呼ばれた「ハイジ」を一緒に作り上げた事で実を結び、更に自身の腕も磨いて行き、やがて高畑作品で学んだテーマの重要性と、自身が渇望する子供の為の冒険活劇を融合した、土の匂いのするエンターテインメントを確立して行った。

高畑監督が居なければ宮崎監督は全く違う監督人生を歩んでただろうし、2人がジブリアニメという唯一無二の世界を構築した事が、30年前はマイナーなジャンルだった、日本の片田舎を舞台にしたファンタジーをメジャーに押し上げ、その方法論を細田守新海誠など、2人を尊敬する新たな世代のクリエイターが取り入れて自分の世界を構築して、ポストジブリと呼ばれて一般客にも受け入れられてメガヒット作品を生み出したなど、高畑監督が蒔いた種は新しい芽を生やし続けてるのかもしれない。やはり計り知れない功績だ。