大人になれなかった漫画少年

今日は「トキワ荘」の漫画家集団のリーダーだった寺田ヒロオが亡くなって20年目の命日。この世を去る20年以上も前に漫画界への絶望から第一線を退き、最晩年は自宅の敷地内に離れを設けて其処に引き籠もり、妻が食事を盆で運んで入口の傍に置くという、健全な野球漫画で一時代を築いた人とは思えない変わりようだったらしい。自分以外の漫画家が生活の為に作風を変化させて行く事を許容出来ず、漫画の子供への影響より発行部数を優先した出版業界に対する寺田の怒りは今の時代には理解しにくい物があるが、文化や芸術媒体に命を懸ける価値など無いといった考えは当時主流では無かった筈で、寺田のように漫画の未来を真剣に考えた人物も少数派では無かっただろう。真面目な思考が美徳とされた時代に青春期を送り、その価値観のまま成功する才能があった漫画家ゆえの悲劇だった。